ヴィッキ教会

ヘルシンキ郊外のヴィッキ教会について思ったことを書きます。この建築は、フィンランドの気鋭の建築家集団,JKMM Architectsの設計で、mimoaにおいても高い評価を得ていたので期待して訪れました。結論から言うと、外観は良いと思いましたが、内部空間に関しては、期待が大きかった分、期待はずれでした。アアルトのマイレア邸のように、とにかく感じの良い空間も勉強になりますが、何かが足りないと感じた時に何が欠けているのか考えることも良い勉強になると思うので、自分なりに分析してみたいと思います。
聖堂の中に入った時に、なんだか祈りの空間として、若干散漫な感じがしました。なんというか今まで見てきた教会にあったような求心性に欠けるのです。その理由はなんだろうかと考えてみました。1つは空間の形状によるところが大きいと思いました。一般的な教会は長手方向に中心軸をおき、奥行きを見せるのがセオリーだと思うのですが、この教会は逆に短手方向に軸を置いています。そして空間に奥行きがない割に、天井高が高いので、空間の全体像を認識しづらいのです。これは、もしかすると今までにないことに挑戦しようということで確信犯的に為されたプランなのかもしれませんが、空間の奥行きの大切さ、平面に対する天井高さのプロポーションの大切さを反面教師的に教えてくれているようです。そして、自然光の取り入れ方にも少し、問題があるように感じました。正面に向かって左側に最大の開口を設けているのですが、露骨に外の庭を見せているので、視線は自然と外に向いてしまいます。これが食堂であれば全然、問題ないのですが、内省する宗教的な空間としては、大きな問題があるように感じました。祈りの空間としては、開口をもっと絞りこむか、あるいはルーバーや壁の厚みを介して、純粋に光だけを抽出するべきできはなかったかと思います。インテリアの造作、照明や家具にもオリジナルな良さがあるだけに、残念に感じました。


↑天井
↓参考:ヴォクセニスカの教会
2010.09.01 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 教会
聖ヘンリーズ・エキュメニカル・アートチャペル
フィンランドのトゥルク市の郊外に、2005年に竣工した、聖ヘンリーズ・エキュメニカル・アートチャペルに行ってきました。エキュメニカルというのは、『全キリスト教会を代表する』という意味らしいです。大して期待もせずに訪れたのですが、率直に、この建築は現代建築の傑作だと感じました。規模的には、安藤忠雄の「光の教会」と同程度の小さな教会なのですが、こういうシンプルで豊かな空間というのは、中々できるものではなく、相当に練り上げて作られた建築ではないかと思います。
教会のパンフレットを見ますと、魚の絵がのっていました。なるほどこの建築の形状は魚の体の形状からインスピレーションを受けてのものなのだと納得しました。シンメトリーな空間なのですが、生き物のような緩やかな曲線を平面にも断面にも持っています。そのおかげで、空間の中の光のリズムに豊かさが生まれているのです。これは、ゴシック建築の空間におけるような整然とした光のリズム感に、命の躍動をほんのりと加えたもののように感じました。
外装のほとんどを覆っている銅板の葺き方にもリズムが感じられます。こういう建築、設計したいなー。




↓参考
コペンハーゲンのグルントヴィークス教会
2010.08.27 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 教会
マイレア邸
あいにくの雨でしたが、マイレア邸を見てきました。マイレア邸はアアルトの傑作として名高い住宅です。建築を数見ていくと、前もって写真からイメージしていたものの方が実物より良かったという経験をすることがしばしばありますが、マイレア邸の場合は、まさにその正反対です。この建築は、実際に中に入って初めて感じることができる質が甚大です。
今回、マイレア邸の空間の質、空気感は写真では、おそらくどんなに頑張っても伝わらないということを実感してしまいました。マイレア邸の写真が掲載されている本は数ありますが、写真は実際に経験したことを思い出すための触媒にすぎないように思います。
見学ができたのは、内部においては、1階部分だけなのですが、その空間は非常に伸びやかで、暖かみがと品がありました。玄関とリビングはステップフロア状に緩やかにつながり、また、丸木がランダムな間隔?で垂直に配置されたパーティション(周囲の林からインスピレーションを得たという)が階段の両側と玄関部分に用いられ、空間を柔らかく分節すると共に、光の音楽的な表現となっていました。また、素材の選び方、床や天井の誠実な姿、アアルト独自の照明、置いてある家具、敷物、美術品、雑貨などを含めて、全てが極めて高いレベルで調和していました。これは、高い美意識を持った施主とアアルトが力を合わせてつくった至高の住空間なのだと思いました。たった1時間あまりの見学でしたので、表層を少し覗いてみたという感じですが、なぜマイレア邸が傑作とされているのかという一端を感じる事ができ、有意義な時間を過ごさせていただきました。
↑マイレア邸の周囲の林
2010.08.26 | | コメント(0) | トラックバック(0) | アアルトの建築
KIASMAの内部空間2 (展示空間)
この建築は外観はなんとも微妙でしたし、ディテールもビスをあえて隠さないで、工作的な雰囲気を狙ったような所があって、様々な芸術を乗せる器としては、少々ヤヤコシイ性格をしている部分もあると感じていたのですが、空間の中における光をとても大切にしている点と、立体的な動線のおもしろさがある点が気に入りました。こういう建築は平面から起こすというような設計のプロセスではなくて、まずスタートラインに立体的な空間のイメージがあるように感じました。スティーブン・ホールさんの空間のイメージ力に少しでも近づきたいと思います。
今回は主に展示空間において、光の扱いが上手だなと思った場面の写真を紹介したいと思います。

↑この写真はウィキペディアからひろってきました。


↓最後にカフェの写真を
2010.08.16 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 美術館建築
KIASMAの内部空間1 (展示空間の間を結ぶアプローチ空間について)

↑これは、建物内に入ってすぐ目にする空間です。壁は木目を転写したコンクリート打ち放しの壁面に白いペンキを吹き付けて仕上げたものと思われます。天井は全面トップライトで磨りガラスのようなもので光を拡散させています。私はこの建物を一巡して、この空間はがこの建築の内部において展示室間どうしをつなぐとともに一種の中庭としても機能していると理解しました。この写真において奥が明るくなっているのがわかると思いますが、奥には自然光をふんだんに取り入れた吹き抜けの「階段&スロープ室」があって、この「階段&スロープ室」とこの吹き抜け空間が展示室への主要なアプローチ空間を形成しています。
↓空間を説明する為に、プランを単純に示した図(汚くてごめんなさい)をのせます。
↑汚くてわかりずらいと思いますが、この建物は単純に考えると3階建て(厳密には、2階の展示空間2と3の間、3階の展示空間4と5の間には階段10段分くらいのレベル差がある)と考えることができます。左側から順に1階、2
階、3階の単純化したプランを表現しています。
黄色い部分がアプローチ空間を、赤い部分が展示空間を示しています。それ以外のことは無視してくれて構いません。この建物のおもしろいところは、プランにも現れているように、屈曲している独特な空間の形状と各展示空間を移動する中で、たびたび自然光が降り注ぐ吹き抜けのアプローチ空間を通るのですが、その時の回遊感覚がなんとも言えないのです。アプローチ空間の写真を続けてのせるのでよければ見て下さい。
↑これは「階段&アプローチ室」の2階の踊り場からエントランス方向を見たものです。
↑これは、2階の展示空間3からアプローチ空間3階の踊り場へと至るスロープです。
↑これは、上の写真のスロープをアプローチ空間3階の踊り場から見たものです。
↑これは,アプローチ空間3階の踊り場から見下ろすように撮影したものです。
↑これは、展示空間5(最上階)へ至るスロープの上方から「階段&スロープ室」を見下ろすように撮影したものです。
↑これは「階段&スロープ室」における展示空間3の出入り口です。ここでは「階段&スロープ室」に入った自然光を、建具を挟んで展示空間内にもいれています。
↑「階段&スロープ室」の展示空間5(最上階)に至るスロープを踊り場から撮影したものです。スロープの上部はトップライトになっています。
今回はKIASMAの各展示空間どうしを結ぶアプローチ空間を中心に紹介しました。
2010.08.16 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 美術館建築
プロフィール
Author:dykuri
栗橋 大輔
Daisuke Kurihashi
一級建築士。二級左官技能士。
2004年 京都府立大学 人間環境学部環境デザイン学科卒業。3年ほど京都の左官「しっくい浅原」にて左官修行 。自然と調和した日本建築や素材の美に気づく。
2007年 脳梗塞で障害者となった母と共に引きこもる。人間の儚さを痛感する。
2008年 安田勝美建築研究所に顔を出す。
2009年 自分自身の建築をイメージする能力不足を痛感する。
2010年 一級建築士資格取得。智子と結婚。直後、ヨーロッパへ一人旅にでる。建築に自分自身を捧げることができるか。
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